

戦後まもない時代、
青年は新しい長編童話を志し、
やがて、日本を代表する児童文学作家となった。
現代児童文学のはじまりの時代、
創作と生活の日々をみずみずしくえがいた
佐藤さとるの自伝小説。
学生時代から童話を書きはじめた主人公は、児童文学者 後藤楢根の紹介で長崎源之助と出会い、ふたりで『玉虫厨子の物語』で知られる平塚武二に会いに行く。創作への気持ちをおおいに励まされたふたりは、平塚に師事することになり、そのすすめで、いぬいとみこや神戸淳吉らと、同人誌『豆の木』を創刊する。
同人誌『豆の木』にあつまった仲間たちは、のちに『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる)や『木かげの家の小人たち』(いぬいとみこ)など、それまで日本になかった新しい児童文学を著すことになった。
童話『ふしぎな塔のものがたり』、『てのひら島はどこにある』のもとになった短編『てのひら島の物語』『井戸のある谷間』を収録。
受賞歴:
「もし書きたいと思っているテーマがあったら、決して離してはいけません。しっかりつかまえていて、作品にしなければなりません。あきらめたらおしまいです」
これは、作中にでてくる平塚武二さんの言葉です。
この言葉にはげまされた主人公たちは、やがて、日本の戦後の児童文学を代表する作家となっていきます。
作品の誕生秘話を知って佐藤さとる作品をより楽しみたい方や、児童文学に関心がある方にはもちろんおすすめですが、風変わりな師弟ものでもあり、仲間たちと
志にむかって努力する青春ものでもあり、じつはボーイミーツガールものでもある本作、多くの人に読んでもらえたらと思います。
『井戸のある谷間』『てのひら島はどこにある』の2つの作品の生まれる過程を知ることができてとても興味深かかった。残念ながら、佐藤さとるさんは亡くなられてしまいましたが、これからも作品を何度も読み返させていただきます。(読者の方より)
小学校の頃に、コロボックルの物語に出会えてとても楽しくワクワクしながら読んでいた気持ちが、よみがえってきて、読後、幸せな気に満たされているのに感動いたしました。空想とも現実ともつかない作品で(ずっと現実のものだと思い続けています!!)懐かしい何処かに連れていかれる様な気持ちです。(60代)