小夜に山のうさぎから人形しばいの招待状がきました。夕方、一人ででかけた小夜が、うさぎたちとすごした秋の夜のファンタジー。
1943年、東京に生まれる。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっ子』(日本児童文学者協会新人賞)『北風のわすれたハンカチ』(産経児童出版文化賞推薦)『風と木の歌』(小学館文学賞)『遠い野ばらの村』(野間児童文芸賞)『山の童話 風のローラースケート』(新美南吉児童文学賞)『花豆の煮えるまで—小夜の物語』(赤い鳥文学賞特別賞)など受賞多数。1993年、永眠。
函館に生まれる。多摩美術大学卒業後、イラストレーターとして活躍。『あのこがみえる』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞。『花豆が煮えるまで』で赤い鳥さし絵賞受賞。また第一回サンリオ美術賞を受賞するなど国内外で高い評価を受ける。絵本に『わたしのいもうと』、さし絵に『夢の果て』、装幀に「佐々木丸美全集」などがある。
★刊行時に寄せられたメッセージです
これは安房直子さんの書かれた小夜と山のうさぎたちのちょっと愉快で愛らしい物語の絵本です。
小夜はうさぎ座の人形しばいに招待されます。
風が吹き落ち葉が舞って、雪の降る前日の寒い夜。みかん色にぼうっと明るい谷間がうさぎ座の会場です。
たくさんの山のうさぎたちはとっておきの着物や洋服でおめかしして、人形しばいの幕開けをわくわくしながら待っています。
舞台の幕はなかなか開かないのですが、客席で待っている小夜とうさぎたちとの楽しい舞台は回りはじめて……。
何といっても、年に一度の待ちに待ったお芝居見物なのですから。
うさぎのカーテン屋さんや、煙草を吸っているお爺さんうさぎの顔も見えます。
おや、あのお婆さんうさぎは、美味しそうにお茶を飲んでいますね。
ほら、あの赤ちゃんうさぎは、火鉢の上のおまんじゅうをじっと見つめていますよ。
くしゃみをしているお母さんうさぎも、欠伸をしているお父さんうさぎもいますね。
あら、あら、ほっかむりのおじさんうさぎは、小夜におまんじゅうを、どうぞどうぞと言っていますよ。
この夜の、うさぎ座の人形しばいは、明日から雪に閉じ込められてしまう山のうさぎたちにとって、また小夜にとっても最高のプレゼントになるでしょう。
あなたも選ばれて、うさぎ座に招待されるといいですね。
ほんとうは山で育ち自然と交歓できる子供しか見に行けないうさぎ座なのですが、実は自然が大好きな子供と子供の心を無くしていない大人の読者も招待されて、一番前の席に座ることができるんです。
そうそう、うさぎ座に出かける時にはきれいな毛糸の手袋をお忘れなく。
帰りにはきれいな手袋人形を貰えるはずですから。
私も物語の中で小夜の隣に座ってお芝居を見たり、うさぎたちとお喋りしながら、わくわくして絵を描きました。(味戸ケイコ)