ベネベントは、本当にある町です。一見ごくふつうの町ですが、ひとつだけ、とてもかわっていることがあります。それは、世界中のどこよりも魔物がたくさん住んでいるということ。魔物は、町のいたるところにひそんでいます。井戸の中、橋の下、劇場のあと……。もしかしたら、おとなりさんや家族のだれかが、魔物かもしれません。ほら、またきょうも魔物がいたずらを始めたみたい。ベネベントの子どもたち! 魔物に目をつけられないように、くれぐれも気をつけて。
セルジオの家には、ご先祖の幽霊が住みついています。ふつう、先祖の幽霊がついた家は栄えるといわれていますが、セルジオのご先祖はわがまま放題でちっともありがたくありません。お世話係のセルジオは毎日こき使われるばかりで、もううんざりです。おまけに、子だくさんのお母さんはいつも家事に追われてイライラ。ついにはセルジオを幽霊の住む部屋に追いやってしまいます! でもお母さんのイライラの原因は、ほかにもあったのです。セルジオは初めて幽霊と手を組んで、ある計画を立てました。
むかしから魔女が住むという伝説のある、イタリアの実在の町ベネベントを舞台に、1820年代の人々のくらしをイメージして書かれた昔話風の創作童話。魔女と人間が共生する世界でまきおこる日常のちょっとした事件を、ユーモラスかつミステリアスに描きます。
<目次>
1 おつかい 14
2 セルジオの家 22
3 ひみつの話 その1 30
4 ひみつの話 その2 44
5 ジャナーラのかみのけをつかまえろ 62
6 仲たがいの理由 74
7 舟をさがしに 84
8 カロッツォの家 98
9 偉大なるご先祖さま 108
10 家がいちばん 118
このシリーズは、「しかけ」に満ちています。巻ごとに主人公の子どもたちが交代するのですが、語られるのは、同じ時期の同じ出来事。それを、読者はそれぞれの視点から多面的に追っていくのです。たとえば、みんなとはぐれた友だちが、本当はどこでなにをしていたのか? なにかを言いかけて口をつぐんだ友だちは、そのときなにを考えていたのか? ちりばめられていたナゾの真相が、巻を追うごとに少しずつ明らかになっていきます!