終戦とともに3人の子どもをかかえ、満州から日本へ命からがらの引揚を体験した、著者の魂の記録。戦争の悲惨さと、生きることの尊さ、母の愛の深さがせつせつと胸にせまる、戦後ベストセラーとなった感動の作品。
1918年長野県に生まれる。県立諏訪高等女学校卒業後、気象庁勤務の藤原寛人(新田次郎)氏と結婚、夫と共に満州に渡る。1946年帰国。のち病床で『流れる星は生きている』を執筆。『灰色の丘』『三つの国境線』等の著書がある。
戦前、満州(現、中国東北部)には約150万人の日本人が暮らしていました。人々は、敗戦とともに日本への帰国をめざしましたが、それは辛く厳しい道のりでした。略奪、飢え、寒さが人々を襲い、満州での民間人の死者は、広島への原爆投下や沖縄戦をもしのぐ規模だったといいます。
それにもかかわらず、その記憶は風化しつつあります。
著者の藤原ていさんが、帰国後病床で、遺言のかわりに執筆したという、この作品をとおして、かつての戦争でなにがあったのか、その悲惨さと平和の尊さを実感してもらえたらと思います。