取材日記

子どもを探して ソウルへ出発!

2013/12/03

『韓国 ソウルの下町っ子 ピョンジュン』で、ソウルの下町で暮らす子どもを撮影した写真家の裵昭(ペソ)さん。小学校5年生のピョンジュンと出会うまでを話してもらいました。

この写真絵本の主人公となる韓国の元気な男の子を探すため、ソウル在住で映像作家をしている友人に頼むことにした。しばらくすると友人から4組の家族のリストが届いた。リストには、住んでいるところや家族構成、子どもの年齢や好きなことが書かれていた。それを読んで、ソウルに住んでいる2人姉弟の男の子に決めた。

さっそく、撮影のスケジュールを組み立てて、2012年の冬、クリスマス前夜からソウルに出発することにした。もちろん、キリスト教徒の多い国柄も考えてのことだった。ところが出発の前日に、「主人公になってくれるはずだった家族と突然連絡がとれなくなってしまった」と友人から連絡が入ってきた。何度事情をきいても答えは同じ。トラブルの発生なのだ。やれやれと、こちらは力が抜けた。

しかし、とにかくソウルに行くことは変えずに飛行機に搭乗した。クリスマスのにぎわいも、どことなくそらぞらしく感じ、寒さだけが身にこたえた。あきらめるわけにはいかない。手元に残された3組の家族を訪ね、直接自分で見て決めるオーディション形式にしようと頭を切りかえることにした。

まず連絡がついたキムさん一家を、ロッテワールドに探しにむかった。厳寒のソウル、ロッテワールドは屋外にある遊園地だから、非常に寒い……。ようやくキムさんたちを見つけだし、インタビューして、家族写真を撮影した。

次に、休日でお母さんが自宅にいるチェさん一家を下町にたずねた。居間で3人兄妹が仲良く遊んでいた。お母さんにこの企画に参加しようと思った理由をきくと、「子どもたちの良い記念になるから」と自然な答えが返ってきた。おみやげの最中をわたすと、子どもたちがめずらしそうに最中を口にした。なかでもピョンジュンの細い目が、うれしそうに笑顔になっていた。どことなく素朴な感じがした。

リストに入っていたもうひとつ別の家族は、子どもがアメリカに留学する予定ということで、キャンセルにして、この家族、チェさん一家に撮影をお願いすることにした。

こうして、新年からチェさん一家を撮影することになった。韓国では旧正月を祝うので、1月下旬、おおみそかと正月の料理作りで大変忙しいチェさん宅に、2013年1月末にうかがった。玄関をあけると、昨年会ったピョンジュンが、にんまりとした顔で迎えてくれた。まだ本人はこれからはじまる撮影を理解していないのだった。

つづく…

文・裵昭(ペソ)

裵昭さんによる、世界のともだち②『韓国 ソウルの下町っ子ピョンジュン』はこちら


(おまけ:ソウルの街角写真。
韓国の市場では、買ったものを
頭にのっけて運ぶ女性が時々見られる。
乾物をたくさん買ったね!)

裵昭

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1956年福岡県生まれ。フォトジャーナリストとして「朝日新聞」「東京人」「週刊文春」「週刊新潮」などに、日本の国際化をテーマとした作品を発表。『鎖国ニッポンが多民族国家になる日』で第28回平凡社準太陽賞を受賞。『段ボールハウスで見る夢』(中村智志 文)で第20回講談社ノンフィクション賞受賞。著書に『となりの神さま』など。福音館書店「母の友」で、職人と工房のシリーズを掲載。日本生まれ日本育ちの在日コリアン。

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