取材日記

スレイダーとの出会い その1

2014/03/24

きょうの取材日記は『カンボジア』の古賀絵里子さんです。アンコールワットのある町、シェムリアップを訪ねた古賀さん。主人公の子どもは見つかるのでしょうか……

2012年秋のこと、世界のともだちシリーズ、「カンボジア」を撮ることになりました。ちょうどその秋にアンコールワットでの国際写真展に参加する予定があり、「カンボジアって、いったいどんな国なんだろう。子どもの日常を通して知りたい!」そう心に灯がともって、写真展のかたわら主人公の子ども探しをすることにしました。

カンボジアに滞在して一番印象的だったのが、人々の笑顔です。なんとも言えない穏やかな微笑み。謙虚で、慈悲深さをたたえているのです。今までアジアを転々と旅したけれど、こんな笑顔はどこでも見たことがありません。私は一気にカンボジアのことが好きになりました。

アンコールワットのある町、シェムリアップでは写真関係者のつてで「アンジェリハウス」を訪ねました。学校に通うことができない子どもたちの暮らしや教育を支援するための施設です。写真を撮ったり、絵を描いたりするような、美術系のカリキュラムが充実しているそうです。たくさんの子どもたちが、元気いっぱい勉強したり、遊んだりしていました。

カンボジアは貧しい家が多く、日本のような中流家庭は少なくて、ほかにはひとにぎりのお金持ちがいるだけだそうです。
そう遠くない過去に、内戦という悲しい歴史を背負ったカンボジア。この国では貧しい家庭が普通なのであれば、そのままの生活を日本の子どもたちに届けたい。校長先生に事情を説明して、何人かの子どもたちと会わせてもらいました。でも、残念ながらこちらの撮りたい条件にぴったりな子はいませんでした。

帰国まであと少し。
肩を落とす私に、日本から一緒に来た知人が、プノンペンへ行こうと誘ってくれました。聞くと、自分が学費を支援している里子に会いにプノンペン郊外の村を訪ねるのだそうです。

最後の望みをかけて、国内線で首都プノンペンへ飛びました。ここでまず驚いたのが建築ラッシュに沸く街並。海外からの支援や企業進出が増え、交通量も人も多く活気に満ちています。反面、少し車で郊外へ出ると過酷な生活をしている人々が目立ちました。ちいさな手づくりの家が密集した村々が目に入ります。  (つづく

(写真・文 古賀絵里子)

古賀絵里子さんによる、『カンボジア スレイダー 家族と生きる』の
くわしい情報はこちらからどうぞ!

 

古賀絵里子

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1980年、福岡県生まれ。上智大学フランス文学科卒業。フリーランスの写真家として、広告撮影や写真講師、テレビ出演などで活動する一方、高野山へ通い新作『一山』の撮影を続けている。2004年、フォト・ドキュメンタリー「NIPPON」受賞。 2011年、浅草に暮らす老夫婦の晩年を綴った写真集『浅草善哉』(青幻舎)を発表し、翌年「さがみはら写真新人奨励賞」を受賞する。国内外で個展、グループ展多数開催。主な収蔵先に、清里フォトアートミュージアム、フランス国立図書館がある。

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