
中野にある東京子ども図書館。ここは子どもの本を専門とする私立の図書館です。1974年の設立以来、40年以上、子どもたちが本と出会う場を作ってきたこの図書館で、「世界の子どもたちシリーズ」(80年代に刊行したシリーズ。くわしくはこちらへ)がずっと読まれてきたということをきき、図書館員の清水千秋さんにお話をうかがいました。
「世界の子どもたちシリーズが約30年ぶりに新しくなるときいて、うれしくてほかの職員にも新シリーズが刊行されることを話してまわりました」と語ってくださった清水さん。
さて、どんなお話がきけるでしょう……?
——80年代に出版された「世界の子どもたち」は、
どんなふうに東京子ども図書館で読まれてきましたか?
児童図書館員になりたてのとき、当館の児童室で国をテーマにした「本でせかいの国めぐり」という読書キャンペーンを行いました。舞台やテーマによって国名が特定できる本を261冊取り出して展示し、それらの本を借りて自分で読むか、職員に読んでもらうと、その国の国旗が貼られたしおりをもらえるというものでした。旧シリーズ「世界の子どもたち」は、先輩職員たちにすすめられ、そのときに初めて知りました。世界の国を意識してもらうには絶好の本だったので、子どもに紹介したり、その場で一緒に読んだりしたことをよく覚えています。
子どもたちに読み聞かせると、学校や遊びが紹介されている部分に、特にひきつけられているようでした。「うちの学校ではね……」などと、自分の学校のことを話してくれる子もいましたよ。
最近でも旧シリーズの「日本」と「韓国」を書棚から取り出して、「近い国だけど、どこがちがうか比べてみたい」と話してくれた5年生の男の子がいました。
——新シリーズがでて、図書室の棚をどうしようと思いましたか?
今回、新シリーズが刊行されましたが、約30年前に刊行された旧シリーズを、情報が古くなったからといって、棚から抜く気持ちにはなりませんでした。先の男の子も、きっと、新旧の「韓国」を比べてみたいはずです。時代の変化を捉えるうえでも、旧シリーズは貴重な資料といえるのではないでしょうか。当館では、早速、新旧のシリーズを隣同士に並べることにしました。
——「世界の子どもたち」と「世界のともだち」を比較して、
どう感じられましたか?
新旧両方のシリーズで取り上げられている国の中で、韓国は特に変化がめざましく驚きました。日本の子どもたちよりも、さらに忙しそうで、なんだか気の毒になりつつも、学校帰りに買い食いすることは変わっていなくて、ちょっと安心しました。
また、ほとんどの国で、携帯電話やインターネットが子どもたちの生活に無縁でないことを知り、複雑な心境になりました。
——外国のことを知る本はいろいろありますが、「世界のともだち」を読んだ人に
こんなことを感じとってほしいということなど、ありますか?
旧シリーズが刊行された30年前に比べると、世界の国々の様子を目にする機会は増えたと思いますが、自分と同じ年頃の子どもたちが、どのような暮らしをしているのかを知ることは、なかなか難しいと思います。ぜひ、新旧両方のシリーズを通して、外の世界へと目を向けるきっかけとなってほしいです。
インタビューは後編へつづきます…!