取材日記

主人公を探して

2015/03/26

今日の取材日記は、『イギリス』の加瀬健太郎さんの登場です。主人公がブルーベルに決まるまでの紆余曲折……。レア写真といっしょにおとどけします!

一番最初にしたことは、主人公の子ども探しでした。これがなかなか大変でした。日本人って真面目すぎるというか、几帳面でしょ? それにくらべてヨーロッパの人って几帳面じゃないというか、おおらかというか、適当というか、もちろんみんながみんなそうだとはいいません。でも、イギリスの親御さんたちと連絡をとりだして、やっぱりおおらかだなと思うようなことが色々あったのです。

実は、主役がブルーベルに決まるまでに3人の子の親御さんと連絡をとっていました。イギリスに住んでいる友達にたのんで、10歳ぐらいの子どものいる家庭を紹介してもらっていたんです。この3家族との連絡の経緯がよく似ているので書いてみます。

まず親御さんにこういった本なのですが、ご協力お願いできませんか? といったメールを送ります。すると「ワオ! なんて素敵なプロジェクトなの! 子どもたちは今からエキサイティングしてるわよ!」っていう感じのメールが返ってきます。大丈夫なんだ、しかもかなり好意的だぞと思って、「では学校に撮影の許可を取りたいんですが?」とかの質問をするとメールがパタっとこなくなります。催促しても連絡はきません。

3家族ともそんな感じで、最後には飛行機のチケットを買ってからダメになったりしました。そうこうしてるうちに、取材をはじめないといけない期限はすぎていきました。僕は内心、出版を遅らせてもらえないかなと思い編集の人に電話をしてみました。「いやー実はまたダメでして……」というと、あっさり「がんばってください!」と返されました。

これはまいったなと思っていたころ、ロンドンの仕立て屋さんで働いていた友人(名前が有名野球選手と同姓同名の鈴木一郎くん)に会う機会があり、子ども探しの件を彼の元同僚に聞いてもらえることになりました。その元同僚の娘さんがブルーベルです。ブルーベルの親御さんとは、あっという間にものごとが決まっていき、1か月後にはイギリスに出発していました。今思えば、ブルーベルを撮る運命だったのかなと思います。

しかしどんな子なのか心配だった

「子どもなんてね、みんな天使のようにかわいいもんやねん。ブルーベルがどんな子やっても、きっといい本ができるで。」と僕はまわりの人にいっていましたが、実は少し心配していました。子どもといえども気が合うとか合わないとかってあるでしょう? しかもブルーベルの写真を見た時、ふつうにかわいいやんと思ったのです。かわいくて何か問題あるのと思われるでしょう。

実は僕の著書に、太っちょの男の子がダイエットをするという本があるんです。(『スンギ少年のダイエット日記』リトル・モア刊)それで、もういちど、その愛嬌、面白路線でいってやろうとかそんな想像力のとぼしく、せこい計算をしていたんです。寒いでしょ? でも、実際ブルーベル本人に会ってみて、そんな心配や計算なんかはいらんかったなーと本当に思いました。なにがどういらなかったのかは、この本の中でみなさんもブルーベル本人に会ってみてもらえたらわかるはずです。

(写真・文 加瀬健太郎)

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加瀬健太郎

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1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、イギリスに留学。London College of Communicationで学ぶ。現在は、東京を拠点にフリーランスのカメラマンとして、本や雑誌などで活動中。著作には、イギリス留学時に出会った、ぽっちゃりした少年との友情を描いた『スンギ少年のダイエット日記』(リトルモア)、撮らなくてもいいような写真を集めた写真集『撮らなくてもよかったのに写真』(テルメブックス)がある。

http://www.kasekentaro.com

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