まじめな人形ブーラーがあやつり人形に恋をした! 自分も役者になるために公園を去る決心をしますが、そこへ恋敵が現れて―??
ロンドンに生まれ育つ。難読症のため14歳まで読み書きができなかったが、やがて美術の才能に気づき、アートカレッジで本格的に絵を学ぶ。その後15年にわたって劇場に勤務し、舞台美術や舞台衣装のデザイナーとして活躍。出産を機に児童書の創作を始め、現在に至るまで多くの絵本や童話を発表し続けている。邦訳された作品に、長編『コリアンダーと妖精の国』『人形劇状へごしょうたい』『気むずかしやの伯爵夫人』、絵本『フェアリーショッピング』がある。
★刊行時に寄せられたメッセージです
木の箱に入れられ、公園に捨てられてしまった5人の人形たち。それまで広間や子ども部屋といった室内しか知らなかった人形たちは、1巻で、雨がふり、凶暴なネコもうろつく屋外の世界へと放りだされ、強いカルチャーショックをうけました。つづくこの2巻では、人形たちの世界が一段と広がります。季節は夏から秋、そして冬へとうつりかわる頃。木の葉が黄金色にそまり、やがて落ち葉となることも、熟した木の実が落ちてくることも、人形たちにとっては初めての体験です。もちろん、厳しい冬にそなえて食料を集めるのも初めて。そんななか、さらに未知の世界(公園に長年住んでいるネズミさん夫婦でさえ知らない世界!)へと足をふみいれたのが、人形たちのリーダーでまじめなしっかりもの、ブーラーです。
みなさんは、あやつり人形を見たことがありますか? 頭や手、指、足などに糸がついていて、それをあやつると、まるで生きているような動きを見せる人形たちです。今回ブーラーが足をふみいれたのは、そんなあやつり人形たちの劇場でした。そこは、きらびやかで華やかな世界。風ふきすさぶ公園とはまったくちがいます。そんな劇場と公園のちがいをうまくみなさんにお伝えしたいな、と思いながら訳しました。
みどころは、1巻以上に個性的なキャラクターがたくさん出てくるところです。わたしのおすすめは、なんといっても、おもちゃのカエル、ナッティー! 食い意地がはっていて、傍若無人のとんでもないヤツですが、どこか愛嬌があって憎めません。ほかにも、かわいいけれど移り気な妖精プラムや、強いものには巻かれろタイプのドラゴン、偉そうなことをいっていても主役には弱い魔法使い、気取り屋でおべんちゃらばかりのシンデレラの意地悪なお姉さんたちなど、欠点だらけでじつに人間くさい名脇役たちが物語をもりあげます。さあ、あなたのお気に入りはだれですか? 教えてもらえると嬉しいです!
村上利佳