博士のところで見つけたクスリをいじめっ子退治に使おうと自分にふりかけたユキコちゃん。いじめっ子たちはたしかにユキコちゃんを見て逃げだしましたが、どうやら、ユキコちゃんが使ったクスリには別の効能があるようです。ユキコちゃんのかわいい勘違いの物語です!
星新一を敬愛する絵本作家が、星新一のショートショートを絵本に仕立てました。文章は、わかちがきにかえ、漢字をひらがなにしたほかは、一字一句原作のままです。星新一作品へのオマージュともいえる絵本です。もちろん絵でみるショートショートとなっています。
1972年大分県に生まれる。筑波大学芸術専門学群視覚伝達デザイン科卒業。2004年、第5回ピンポイント絵本コンペで優秀賞を受賞。受賞作をもとにつ くった『えんふねにのって』で、2006年に絵本作家デビュー。作品に『ぼくのかえりみち』『いま、なんさい?』『ひみつのばしょ』『ぼくひこうき』『おじいちゃんのふね』、翻訳書に『ニブルとたいせつなきのみ』等がある。
ユキコちゃんは、おとなしい子なんです。そのせいで、ときどき友達にいじめられます。ユキコちゃんはそれが悔しくて、いつも、どうにかしたいと思っていました。そんな時、近くに住んでいる博士の研究室で、博士が発明した素晴らしいクスリを見つけます。そのクスリのおかげで、ユキコちゃんは勇気を得て、いじめられていた友達にガツンとひとこと言うことが出来るのです。
ユキコちゃんが、ある勘違いをしていて、しかも、それに気が付いていないのはユキコちゃんだけで、まわりの人や読者はみーんなそ れに気が付いています。絵本を読んでいると、ついついユキコちゃんに叫んで教えたくなります。「ユキコちゃん、後ろー!」っ て。遠慮せずに、ユキコちゃんに教えてあげて下さい。そうすると、最後の最後、ユキコちゃんと一緒になって 「あーよかった!」と 言って胸をなで下ろし、とってもいい気分になれると思います。
この絵本の原作を書かれている、星新一さんはショートショートの偉大な作家で、数多くの作品を書いています。この『ユキコちゃんのしかえし』は、1966年 2月20日、朝日新聞の日曜版に掲載され、『きまぐれロボット』という本(角川文庫)に収録されている作品で、もう、半世紀も前の作品なんで す。(物語の中で、少し聞き慣れない言葉が出てくるのはそのせいです)僕は中学生の頃、星さんの作品にどっぷりはまり、余計なモノを全て削ぎ落とした、物語の骨格ともいうべき、ショートショートの美しさの虜になりました。それから随分時間が経ち、僕が絵本を描くようになってからも、星新一作品への思いは、ずっと心の奥底にありました。そして、あるとき、ふと、星さんの作品を絵本にしたら面白いんじゃないか?あの美しい骨格に僕の絵で肉付けをして新たな作品(絵本)として子どもたちに読んでもらいたい!という想いが湧き上がってきました。それからすぐに、数ある作品の中から、この話を選び、絵本『ユキコちゃんのしかえし』を描き上げました。しかも、その作業の楽しいことといったら!(まだこの時は、この絵本が出版されるまで、5年もの月日を要するとは思ってもいませんでしたが…)今回、その想いがようやく形になり、子どもたちに届けられることを、とても嬉しく思います。
ひがしちから
星新一と言えば、ショートショートの神さまと呼ばれた作家ですショートショートは短いお話でしかもオチの付いていることが条件。もちろん「ユキコちゃんのしかえし」にもかわいいオチが付いています。この絵本では、そのオチの部分がテキストを越えて、ユキコちゃんだけがわからなくて、読者には先にわかる劇場型の展開になっています。ぜひ、ユキコちゃんの勘違いを一緒に楽しんでください!