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『精霊の守り人』は、バルサという三十歳の女用心棒が、ひょんなことから、新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムをたすけ、彼を守るために奮闘する物語です。
この物語の草稿を担当の編集者さんに見せたとき、「あのね、児童文学って、子どもが主人公に心を乗せていける物語なのよ。子どものお母さんみたいな年代の女を主人公にして、どーする!」と怒られましたが、私にとっては、主人公のバルサは、どうしても三十歳以上でなくては、ならなかったのです。
なにしろ、いきなり頭の中に、短い槍を担いだ三十代のオバサンが、小さな男の子の手をひいて逃亡している姿が浮かんできたことで、この物語は産声をあげたのですから。
若さの名残を残してはいるけれど、もう若い娘ではない、世間の裏の裏まで見てきた、経験豊かな大人の女が、閉じた宮のなかで神の子孫として育てられていた、無垢な少年を守って闘う、そういう話が心に浮かんできて、その物語を書きたいという衝動に突き動かされるようにして、一気呵成に書き上げた物語なのです。
もうひとつ、この物語を書くときに、心のなかにあった大切なイメージは、異界が、人の生きる世界に近々と重なって存在している世界のイメージでした。
ふつうの人々には、確かには感じられない――しかし、そこに確かに在る異界。 人にとっては、<精霊>や<神>に思える存在がうごめく異界と、人の世界がふれあうときに生じる不思議……そういう物語を書いてみたい、と思ったのです。
百戦錬磨の女用心棒と、勝気で真直ぐな少年の物語。手にとっていただけたら幸せです。
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| 上橋菜穂子 |
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