取材日記

インレー湖のふしぎなくらし

2015/09/29

『ミャンマー』のカメラマン、森枝卓士さんによる取材日記、インレー湖に舞台を移して2回目です!(1回目はこちらです)スミンミャたちが毎日食べている、おいしそうなごはん……。いつか食べてみたいです。

インレー湖はふしぎな湖です。ミャンマーでいちばん大きな湖ですが、なにしろ、そのまわりとかじゃなくて、中に人がすんでいるのです。湖の上に家をたてて、すんでいるのです。そして、舟は足でこぎ、畑は湖にういていて……。
何十年も前にたずねたことがありました。ふしぎなところだなあと思っていたので、その湖に住んでいる一家を紹介してくれるという人に感謝して、連絡をしたのでした。

久しぶりのインレー湖はだいたいはむかしのままでした。でも……。

スミンミャの家には電気がきているし、テレビもありました。お父さんはスマートフォンをもっていて、子どもたちはそれでゲームをして遊んでいました。お父さんとは、フェイスブックのお友達になりました。ちょっと、ふしぎなかんじでした。

スミンミャたちのくらしも、むかしと同じように湖の上の家なのですけど、何を毎日しているの?と聞くと塾に通っていて……っていうのです。
日本とはまったくちがうくらしなのに、塾に通ってということ、まったく、想像もしていなかったものでおどろいたのですけど、考えてみたら当たり前かもしれません。アジアじゅうで同じようなことをしていますもの。男の子たちはサッカーが好きだったり、女の子たちはおしゃれにきょうみがあったり。そういうことも同じですものね。

食べ物のこと。
ミャンマーの食べ物は日本とはだいぶちがいます。そして、民族や地域によってもずいぶんとちがいます。ただ、このインレー湖があるシャン州には日本と近しいものがあったりして、それがまた興味深いです。納豆のことは、本の中でも紹介しましたが、このほかに、たとえば、お赤飯があります。日本のお赤飯と同じようなものが、しかも、同じようにゴマをふって食べたりするものがあったりするのです。
味? お赤飯みたい。

ちょっとちがうかなというもので、おもしろいのが食べるお茶です。お茶を飲むのではなく、食べるのです。つけもののようにしておいたお茶の葉っぱと、ピーナッツやトウガラシ、ショウガなどをあわせて食べるのです。スナックのようなかんじで。

このほかにくだものとかめずらしいものも、いっぱいあります。スミンミャや家族といっしょにいくつも市場、いきましたけれど、たのしいです。屋台のご飯もおいしいし。あの豆腐のとろとろとかたまっていないようなものが、麺とからんだものとか、おいしかったなあ。

スミンミャの家と、かよう学校は湖の中でもいちばん奥にあります。ホテルは湖の中にもあったのですけど、すごく高級なところだけでした。長いこと泊まりこむのは、とても無理。それで、湖に近いふつうの町のホテルにとまりました。毎日、舟をタクシーのようにやとって通いました。一時間ちかくかけて。

その時期、それは9月だったのですけど、雨期でした。雨がよくふる季節です。一日中ふりつづけるということはないのですけど、夕方にふることが多かったのです。ホテルにもどるとき、最初は晴れていても、かならずとちゅう、どこかで雨が、どしゃぶりの雨がふって……。もちろん、屋根などない舟ですから、雨ガッパを着るのがじょうずになりました。それにしても、すごい雨でした。すこしまてばやむんだからと、スミンミャたちは気にしませんが。

ミャンマーはいま、大きくかわろうとしているさいちゅうです。日本の会社などもたくさんはいっています。ヤンゴンなど、前はなかった高速道路や高いビルが次々に作られています。
スミンミャやこの本をよんでくれる日本の子どもたちが大人になるころにはもっともっと行き来が多くなるでしょう。
「君の話を子どものころ、絵本でよんだよ。しっているよ」
そんなことになったら、うれしいのだけど、さて、どうなるでしょう?

(写真・文 森枝卓士)

世界のともだち㉖『ミャンマー 湖の上でくらすスミンミャ』、
くわしくはこちらをごらんください!
ミャンマーのおいしいごはんのことも、たくさん紹介しています。

森枝卓士

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1955年、熊本県水俣市生まれ。大正大学客員教授。早稲田大学などでも食文化を講じる。高校のころ、アメリカ人写真家ユージン・スミスと出会い、写真家を志す。国際基督教大学で文化人類学を学び、以後、アジアをはじめ、世界各地を歩き、写真、文章を新聞、雑誌に発表。おもな著書に、『食の冒険地図』、『世界の食事おもしろ図鑑ー食べて、歩いて、見た食文化』、『考える胃袋ー食文化探検紀行』、『料理することーその変容と社会性』、『食べもの記』、『手で食べる?』などがある。レシピ集なども執筆。

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