取材日記

サリーのプロデュース力

2015/04/03

加瀬健太郎さんによる、『イギリス』の取材日記、2回目をおとどけします。今回はお母さんのサリーが大活躍!(1回目の取材日記はこちら

さてやっとイギリスまで乗りこんできました。しかし、実際どうしたもんだ。僕は、学校に撮影に行く以外のことを、なんにも考えていなかったのです。「さあ私たちはどうしたらいいのかしら?」とお母さんのサリーに聞かれても、大事な所で気の弱い僕はどこまで要求していいものかなと思案していました。それを感じたのか、頼りないなと思ったのかどうだか知りませんが、サリーがこの本の撮影プロデュースを始めてくれたのです。

「土曜はおばあさんの所に行きます。明後日は動物園です。ここに行ってからあそこに行って、あそこではこういう絵が撮れると思うの!」「ケンターロウこっちきてココから撮ればどう? あんたたちこういうポーズしてみて」といった具合です。
学校から帰ってきたらスーパーで寿司まで買っておいてくれて、「本物のお寿司じゃないと思うけど、これを食べてから習いごとを撮りにいきましょう!」ってな感じで、僕は連れられるがまま、いわれるがまま、車に乗りこむだけの毎日です。

「最後の日は、ブルーベルとアーチーが仕立屋さんにお父さんの仕事を見学に行くっていうのはどう?」とサリー。僕は「べリーグッド!」と3年のイギリス留学生活を感じさせない英語で返していました。

イギリスでのそんな撮影の日々は、まるで夏休みにいとこの家に行って、おばさんに色々連れて行ってもらったり、ごちそうになったりしている小学生のような生活でした。ほんとにサリーがいなかったら、この本はどうなっていたのでしょうか。1回目の取材日記で、ヨーロッパの人は日本人にくらべて適当なところがあるみたいなことを書いたけど、一番適当なのは僕だったのかもしれません。

お父さんが晩ご飯作ってる!

僕とお父さんのアレックスは共通点が多いなと思っていました。年も近いし、妻が主婦で子供がふたり、郊外に住んでいてサッカーのテレビ観戦が好き。でもひとつ大きく違うのは、アレックスは晩ごはんをいつも作っているということです。イギリスでは、日本と違って残業がなく、定時に帰れるというのはありますが、それを差し引いても、なかなかできることではありません。これがレディーファーストの国の底力かと感心し、僕ももう少し家のことをしないといけないなとか思ったりしました。

ある時、僕はサリーに「晩ご飯作ってくれるような旦那さんもらってよかったね。」といいました。「そうなの。私の母には、『あんたは何もしてないのね!』とかいわれるけど、ほんと彼と一緒になって幸せだわ。でもね……」とそのあと続くサリーの話を聞いていて、僕は一瞬デジャブかなと思いました。この話どこかで聞いたことがあるぞ、そうだ! うちの妻からよく聞く僕への愚痴とおなじだ……! 夫婦ってグローバルなんだなと感心しました。(このような辛気くさい話は本には書いていないので、ご安心して本を読んでいただけたらと思います。)

(写真・文 加瀬健太郎)

サリーとアレックス夫婦にも大注目!
世界のともだち㉓『イギリス 元気にジャンプ! ブルーベル』 の詳細はこちらです!

加瀬健太郎

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1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、イギリスに留学。London College of Communicationで学ぶ。現在は、東京を拠点にフリーランスのカメラマンとして、本や雑誌などで活動中。著作には、イギリス留学時に出会った、ぽっちゃりした少年との友情を描いた『スンギ少年のダイエット日記』(リトルモア)、撮らなくてもいいような写真を集めた写真集『撮らなくてもよかったのに写真』(テルメブックス)がある。

http://www.kasekentaro.com

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