取材日記

はじめてのバングラデシュ その2

2014/03/26

きょうの取材日記は、⑨巻目『バングラデシュ』の石川直樹さんによる「はじめてのバングラデシュ」その2です。(その1はこちらです。)首都・ダッカまでの道のりです!

 

バングラデシュの北端の国境付近から南のダッカへ向かおうと、ひたすらバスを乗り継いで南下していった。乗り継ぎのためにぼくがバスを降りるたび、親切な人々がやってきて、あれこれ世話を焼いてくれた。もちろん親切心からなのだろうが、外国人への好奇心もありありと滲み出ていて面白い。

バングラデシュはまだ国ができてから40年あまりしか経っていない。外国人がめずらしいのである。まるで20年前のインドのようだ。

ぼくがダッカに行きたいことを知ると、あるおじさんがバス停までリキシャで連れていってくれるという。「インドルピーしか持っていないんです」と言うと、「いいんだ、いいんだ」と言って、一緒のリキシャに乗せてくれるのだった。

バスターミナルに着くと、今度は「腹ごしらえをしよう」と言われてバスターミナルの定食屋で魚カレーをご馳走になってしまった。ぼくはとにかくインドルピーをバングラデシュのタカという通貨に両替をしたかったのだが、「いいんだ、いいんだ」と言って、おじさんと若者がカレーをご馳走してくれたのである。親切すぎる。

定食をご馳走してくれた若者が、今度はぼくをリキシャに乗せて、街のATMまで連れていってくれることになった。そこで、ようやくバングラデシュの通貨、タカをおろすことに成功し、若者に心から礼を述べた。

すでに夕方17時を過ぎ、夕暮れが迫っていた。ついにダッカ行きの深夜特急バスに乗り込むことができ、18時頃に出発した。途中で雷混じりの雨が降ってきて、ボロバスの雨漏りに悩まされる。おかげで床に置いていたバックパックがびしょ濡れになってしまった。

バングラデシュの首都ダッカには深夜3時に到着した。若者がリキシャをつかまえてくれて、ホテルへ到着したのが深夜3時半だった。バングラデシュの人は日本から来た旅行者に親切であるとは聞いていたが、ここまで何から何まで世話になって、感謝してもしきれない。

くたびれ果てていたが、逆に目が冴えている。ようやく目的地である、バングラデシュの首都ダッカにぼくはやってきたのだ。

翌日から、ダッカの街をとにかく歩き続けた。ビリアニやチキンライスを食べ、派手な選挙ポスターを撮影し、船着き場で人に囲まれ、オールドバザールの路地をあてもなく散策した。ルイス・カーンの設計による国会議事堂、議員宿舎、病院などを見学した。モスクを訪ね、グラミン銀行が作った洋服屋で買い物をし、美大を覗いた。川を渡ってガンジス川を見に行った帰り、ぼくはアシフが暮らす街を訪ねたのだった。そこをスタート地点にして、本書『バングラデシュ』が生まれたのである。

写真・文 石川直樹

『バングラデシュ』刊行を記念して、3月28日に
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石川直樹

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1977年東京生まれ。高校2年生のときにインド・ネパールへ一人旅に出て以来、2000年に北極から南極まで人力で踏破するPole to Poleプロジェクトに参加。翌2001年には、七大陸最高峰登頂に成功。その後も世界を絶えず歩き続けながら作品を発表している。その関心の対象は、人類学、民俗学など、幅広い領域に及ぶ。著書、写真集多数。2011年、土門拳賞受賞。

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