取材日記

陽気なカリオカっ子との出会い

2013/12/03

第3巻の『ブラジル』。来年のサッカーワールドカップや、2016年のオリンピックにむけてもりあがる国です。カメラマンの永武ひかるさんに、主人公のミゲルくんとの出会いをおしえてもらいました!

 

「世界のともだち」シリーズのブラジル編を担当することになった2012年の秋。このしごとは被写体さがしからはじまった。日本の約 22.5 倍もある広いブラジルには、元気いっぱい、フレンドリーな子どもたちがたくさんいる。アマゾンから大都会まで、くらしている環境もいろいろ、髪の毛の色や肌の色もさまざま。それでも、つぎのオリンピックもあることだし、やっぱり「リオ」(リオデジャネイロ)かな、とまず場所をきめた。

リオ生まれの愛称で知られる「カリオカ」。カリオカっ子さがしのはじめの条件は、小学生の男の子。さらにお姉さんか妹がいるといいかな、とも思った。どんな子が主人公になるのか、どんな出会いがあるのかわくわくしながら、リオへむかった。

リオにつき、さっそく主人公さがし。候補になる子をさがす中で、ある学校の先生をたずねることになった。学校はたまたま宿とおなじエリアの丘の上。建物も雰囲気があって魅力的。子どもたちの自由や創造性を大切にしているところも興味深い。学校側に相談をする時に、日本から持ってきた、かつて偕成社から刊行された古いシリーズのブラジル編を見せた。絶版になっていて、古本で入手した 30 年近く前のものになるのだけれど、新しいバージョンになるから参考までに、と。パラパラとめくった先生が声をあげた。「えーっ、これはここの学校じゃない?」。ほかの先生たちも、どれどれとあつまってくる。これはだれそれじゃない、この子は私の息子よー、と大もりあがり。なんと、偶然にも前のシリーズに出ていたのとおなじ学校だったのだ。

幸先がよい、とおもったものの、主人公さがしには数々のハードルがあった。まず、本人が本の主人公になることに興味を持ってくれて、撮影に乗り気なこと。次に、お父さんやお母さんが OK してくれること。(以前とちがい、ブラジルでも個人情報や肖像権などのとりあつかいについて、特に未成年を守る上でちゃんとした対応が必要になってきている。)そして、クリスマスとカーニバルの時期に、リオにいること。 ブラジルの年間行事で大切なのはクリスマス。日本のお正月のようなもの。さらにリオといえばカーニバル。このふたつの時期にリオにいる子どもをぜひ撮影したいとおもっていた。ブラジルではこの時期は、子どもたちは3か月近くも夏休みとなる。家族そろって旅行にでかける人たちも多く、子どもたちもリオにいない場合があるのだ。「クリスマスはリオにいるの?」「カーニバルはどうすごすの?」「兄弟はいる?」

子どもたちと会話を進める中で、好奇心いっぱいの目を向けてくるひとりの少年がいた。くりくりとした目をかがやかせ、将来は俳優になりたい、という。それがミゲルだった。およそ四半世紀以上を経て、おなじ学校での撮影取材もおもしろい、ということになり、ミゲルが主人公の本が生まれることになった。それから足かけ1年の撮影。リオの美しいビーチ、クリスマスや街角カーニバル、そして毎日のくらし。1冊におさまりきらないくらいの、もりだくさんの本になったと思う。

文・永武ひかる

永武ひかるさんによる、世界のともだち③『ブラジル 陽気なカリオカ ミゲル』はこちら

永武ひかる

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東京外国語大学でポルトガル語や人類学を学び、銀行や写真通信社を経てフリーの写真家に。ブラジルでの撮影は20年以上にわたり、南米など世界各地で主に自然と人間の関わりをテーマに取材。写真展「森に聴く〜アマゾン」「風に聴く」、著作に『アマゾン漢方』『マジカル・ハーブ』、世界の子どもたちが写した写真集『ワンダーアイズ』(プロデュース)等がある。2000年から世界の子どもたちが参加する非営利の写真プロジェクト「ワンダーアイズ」を主宰。国内外で写真展やワークショップを多数開催している。

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