取材日記

アメリカとコリンの家族

2014/01/17

今回の取材日記は、世界のともだち第6巻『アメリカ』を撮影した鈴木智子さんです。
カリフォルニア州アーバインでくらす12才の男の子コリンと出会うまでのことや、アメリカの撮影で思ったことを語っていただきました!

アメリカはとても広い。そして人種もさまざま。アフリカ系、アジア系、ヒスパニック系……いろいろいる。主人公をひとりにしぼるのは本当にむずかしい。今回のシリーズのためにわたしは、以前アメリカで暮らしていたときの友人ネットワークをつかって主人公さがしをはじめた。

主人公をえらぶにあたって、友人から紹介してもらった人に日本からメールを送ったり、スカイプでインタビューしたりした。どの子もいい子だったけれど、撮影したいと考えていたハロウィンの行事や学校の様子、そして子どもの年齢から、ロサンゼルス郊外に住むコリンが有力候補となった。

コリンの家族に初めてスカイプすると、画面にうつった一家はお母さんを筆頭にみんなかっこいい!わたしがペルーで長く暮らしていたことを話すと、お父さんが流暢なスペイン語で返答してくれた。アメリカ人と話しているのに、最後までスペイン語の会話になってしまったのはおもしろかった。


撮影でいちばん頭が痛かったのは肖像権だ。画像を使った犯罪が頻繁に起こる世の中、学校の撮影許可がおりるかどうかは、本当にドキドキだった。まず、小学校の校長先生にメールと電話で出版の趣旨を伝え、担任の先生にも連絡をとった。クラスメートに承諾書が配られ、ほぼ全員の許可をとることができた(ひとりだけ許可をもらえない家庭があったけれど)。

実際には、自由に動きまわる子どもたちの後を追いながら、許可がおりた子どもだけを撮影するのはとても大変だった。「ああ、いい場面なのに撮ってはいけない子までこっちを向いている!」ということが多々あった。

 

アメリカの人々を撮影していて感じたこと。

1.  やっぱりスケールが大きい!
アメリカはなんでも大きい。レストランの食事の量も日本とは比べものにならないくらい多いし、 100両以上ある貨物列車が走ってるし、高速道路も7車線あった(対向車線も同じく7車線)。

ほかにもすごいなと思ったのは公共の体育館だ。正面の入り口から入ると、左にバスケットボールのコートが9面、右にバレーボールのコートが12面あり、新体操をするところや観客が座るベンチスペースもあった。ふつうの子どもたちがこんな充実した施設で練習できるのだから、アメリカがオリンピックでたくさんのメダルを獲得するのも納得できるなあと思った。

 

2.  カメラに向けるにっこり笑顔
アメリカ人は写真を撮るときに「はい、チーズ」と声をかけると、みんないっせいにこちらを向き、口角をあげ歯を見せてこれ以上ないというぐらいの笑顔をつくる。いくらけんかをしていても、ふてくされていても「写真撮るよ!」というとこの顔になるのが不思議だ。

記念撮影にはいいけれど、ちょっとだけこちらを向いてもらいたいときに「コリン」と声をかけると、自然な顔をやめて、アメリカ人特有のつくり笑いの顔をしてしまう。「自然なところを撮りたいんだけれど……」と言っても、やはりダメ。歯を見せたかんぺきなにっこり笑顔になる。

2回目の撮影に行ったとき、コリンは歯の矯正をしていた。わたしがカメラを向けると、矯正で金具のついた歯を見せたくなくて口の動きが不自然になるのに、コリンは反射的に“歯を見せるつくり笑い”をしてしまう。悲しいけれど、こんなにきちんと笑顔を作れる人たちもなかなかいないよねと感心するしかなかった。


 

3.  アメリカの「典型的な家庭」
アメリカの典型な家庭とはどのような家庭なんだろう? 人種も宗教も文化もちがい、経済的な格差も大きい人々が集まったこの国の典型的な家庭は想像がつかない。たぶん、ひとことで言えないのが、アメリカだと思う。そこでコリンの一家だけれど、この家族はとても仲がよかった。親せきは毎週のように集まって食事をしたり、コリンのアメリカンフットボールの試合を応援したりする。夏はみんなでキャンプ。個人主義でひとりひとりが独立しているイメージもあるアメリカだけれど、このように家族の絆が強い家庭も多いのかもしれないと思った。

文・鈴木智子

鈴木智子さんによる、世界のともだち⑥『アメリカ 西海岸の太陽とコリン』はこちら

鈴木智子

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1969年東京生まれ。アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校地理学部卒業。大学卒業後は、中米コスタリカの小学校や南米ペルーの大学で語学教師を勤める。その後、ペルーのクスコを拠点に、先住民の文化や祭りを撮影し紹介する。著書に『アンデス、祭りめぐり』『アンデス奇祭紀行』『世界遺産の町クスコで暮らす』『アンデスの祭り』がある。アマゾンの森林保護活動や、自然や文化をテーマにしたテレビ番組のコーディネーターとしても、南米やアメリカで取材活動をする。

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