取材日記

ピョンジュンたちの暮らしを撮る

2013/12/16

ソウルの撮影をスタートした裵昭(ペソ)さん。現地に何度も足を運び、小学校5年生の
ピョンジュンに密着取材した様子をお話してもらいました!
(韓国・取材日記の1回目から読みたい方はこちらへ

旧正月を迎える1月下旬、おおみそかの日。ピョンジュンたちの家を訪ねた。
ピョンジュンのお母さんは台所で、おばあさんたちと正月の料理に追われていた。子どもたちもなにやらお手伝いをしているようで、できあがった料理を味見している。ピョンジュンも料理を運ぶのを手伝いながら、揚げたての魚を口に入れている。熱くて口元がはふはふしている。なんだか自分の幼いころの正月の記憶がよみがえってきた。

次の日、ピョンジュンたちの旧正月の様子を撮影。韓国では正月に「トック」というお雑煮を家族みんなで食べる。ニンニク入りのスープに、お餅や水ぎょうざが入ったボリュームがある食べ物だ。

韓国の新学期は3月からなので、ピョンジュンは4年生から5年生に学年があがる頃だった。ピョンジュンは、じっと見ていると、どこか愛嬌のある顔立ちだ。

3月に3回目の撮影のためソウルへ入り、5年生になったピョンジュンといっしょに、朝、学校へ向かった。家から教室にたどりつくまでずっと上り坂だ。新学期の初日、教室はとてもにぎやか。担任の先生のあいさつもそこそこに、教科書を運ぶため、ピョンジュンたちは階段を下りたり上ったりと大忙し。下級生の教室にも教科書をせっせと運ぶ。はじめに想像していたよりもピョンジュンの身体能力が高いのを発見した。

先生にピョンジュンの撮影でお世話になりますと、あいさつと協力をもとめた(もちろん、了解はすでにとってあったのだが)。ピョンジュンの家族の家を初めて訪問したときと同じように、ここでも日本のおみやげの最中を先生たち全員に配った。みんなよろこんだ。

ピョンジュンの同級生たちと、わたしがいっしょの空気にとけこむのに時間はかからなかった。カメラに慣れるのも早かった。撮影をはじめてしばらくすると、子どもたちは自分たちの世界にもどっていった。

ピョンジュンは素直な子で、こちらが考えている以上に、面白い動きをしてくれた。自分たちが得意とするトランプゲームをやりはじめ、グラウンドで仲間とやるサッカーを全力で楽しんでいるのが伝わってきた。遊んだ帰りに寄ったトッポギ屋では、クラスメートたちにもおごってやったわたしに、お礼を言った。

子どもの成長は早い。6月、初夏に会ったピョンジュンは日焼けして、たくましくなっていた。
どことなく自我がめばえる年ごろ、少年へと成長しているのがわかる。

これから先、いろんなことに出会うピョンジュン、元気でやれよ。

文・裵昭(ペソ)

裵昭さんによる、世界のともだち②『韓国 ソウルの下町っ子ピョンジュン』はこちら

裵昭

関連記事一覧

1956年福岡県生まれ。フォトジャーナリストとして「朝日新聞」「東京人」「週刊文春」「週刊新潮」などに、日本の国際化をテーマとした作品を発表。『鎖国ニッポンが多民族国家になる日』で第28回平凡社準太陽賞を受賞。『段ボールハウスで見る夢』(中村智志 文)で第20回講談社ノンフィクション賞受賞。著書に『となりの神さま』など。福音館書店「母の友」で、職人と工房のシリーズを掲載。日本生まれ日本育ちの在日コリアン。

  • チェック