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絵本紹介 | コラム

まちがった色なんてない えをかくかくかく

 絵筆をもった男の子が、自由に奔放に、青い馬、赤いわに、黄色い牛など、現実とはちがった色であざやかな動物たちをかいていきます。そして、満足げにこう宣言します。「ぼくは えかきだ。じぶんの ほんとうの えを かく かく かく。」
 紙のうえでは、何をやっても自由です! ありえない色でかいてもいいし、実在しない生き物をかいたっていいのです。「まちがった色なんてない。自由な色でかいていい」という、作者カールの美術に対する思いがこめられた、のびのびとした一冊です。

 現在はアメリカで暮らす作者ですが、第二次世界大戦のときは、両親の出身地であるドイツに住んでいました。ナチス政権が人々の生活をコントロールしていくなかで、色彩にとぼしい子ども時代を送っていたといいます。けれどもあるとき、12歳のカールの美術の才能を見抜いた先生が、自宅に呼び、当時みることを禁じられていた絵を見せてくれました。その中にあった、フランツ・マルクの絵「青い馬1」に、カールは多くのことを学び、影響を受けたといいます。本書はマルクを尊敬する思いから生まれた作品なのだそうです。

 巻末には、「青い馬1」を収録しています。