工藤ノリコ エッセイ GO!GO!旅日記 ジャングルへGO!

vol.13 マイケル・ジャクソンの巻

 80年代に中学・高校時代を送った私にとって、マイケル・ジャクソンの突然の死は大きな衝撃だった。ラジオの追悼番組で彼の曲を延々と聴いているうち、まったく思いがけないことに、耐え難いほどの深い喪失感におそわれてしまった。

 自分がこれほどまでにマイケルが好きだったということを、亡くなってはじめて思いしったのだった。ここから約1ヶ月ものあいだ、私の生活はマイケル追悼一色となる。CDを聴いては泣き、ミュージック・ビデオを見ては涙にくれる毎日。そんな中、『Earth Song』のミュージック・ビデオに目がくぎづけになった。

 熱帯雨林の森が無惨に破壊され、象は牙を切りとられ殺される。もともとが弱りきって見ているところへ、打ちのめされるような映像がつぎつぎにうつしだされていく。
「人間って、なんなんだ……。ああ、地球はもうダメだ」
なにごとかというくらいに泣いていたそのときである。
「あっ!」
地球が逆にまわりだし、時間が巻きもどされていく! 殺された象は生きかえり、牙も元どおりになって起き上がった。切り倒された樹々もすべて立ち上がり、森はなにごともなかったように、蒼く深い霧に静かに包まれている。
よかった、私の大切なものはちゃんとある。まだなにも、なくなってはいない……
心が絶望から希望に転じたとき、体中にエネルギーがわいてくるのを感じた。

 ミュージック・ビデオの中の話ではあるが、この体験が私の転換点となった。私はヨーダたちオランウータンや森のために、しょせん自分が何をしようと何も変わりはしない、と絶望していじけていた。でもそれは違った。結果が問題なのではなく、自分がどう生きたいかの問題だったと気がついた。ビデオのように地球が逆回転して時間が戻ることはない。でも、マイケルのメッセージは、心に希望を持つことで強く前に進んでいけると私にあざやかに教えてくれた。

 これで心は決まった。絵本『バナナじま』のあとがきに、ボルネオのプランテーションのことを書いてもいいかどうか、編集のTさんに相談してみよう。(つづく)

『新しいマイケル・ジャクソンの教科書』西寺郷太・著(ビジネス社)<br />地球上のみんなのための熱心な活動家でもあったマイケル。この本でマイケルのすべてがわかる!
『新しいマイケル・ジャクソンの教科書』西寺郷太・著(ビジネス社)
地球上のみんなのための熱心な活動家でもあったマイケル。この本でマイケルのすべてがわかる!
『HISTORY』『EARTH SONG』収録CD。発売日に購入して以来、ずっと聴いていたのに、この曲のミュージック・ビデオを見たことがなかった。
『HISTORY』『EARTH SONG』収録CD。
発売日に購入して以来、ずっと聴いていたのに、この曲のミュージック・ビデオを見たことがなかった。