工藤ノリコ エッセイ GO!GO!旅日記 ジャングルへGO!

vol.12 バナナじまの巻

 来年4月と決まった出発までの日々、私は以前雑誌に掲載したお話を一冊の本に仕立てなおす仕事をしていた。『センシュちゃんとウオットちゃんのバナナじま』という作品で、これを描くために、前述のボルネオ・海辺リゾートへ取材に行ったのだった。

 主人公が南の島『バナナじま』へ出かける、という大筋しか考えていなかったのだが、現地でオランウータンの孤児、ヨーダと出会って一気にストーリーがうかび、オランウータンがたくさん出てくる、私の希望をつめこんだお話が出来上がった。

 単行本化にあたり、見開き1ページに新たに何か描き加えることになったので、バナナじまの楽しい地図でも描こうかな? と思っていた矢先、なにげなく見ていた『ボルネオ・ネイチャーブック』のある写真に目がとまった。

 一見すると一面緑の自然の風景だが、何かがおかしいのだ。ヤシのような木が、整然と列になってならんでいる。これは作られた人工の景色なんだ、ということに気がついた。人間が自然を、こんなふうに作りかえてしまって大丈夫なのか? 背筋がこおるような思いがした。

 この植物はオイルパーム(アブラヤシ)で、パーム油を生産するためのプランテーションの写真だった。特集記事をくわしく読んで、いろいろなことをはじめて知った。

 パーム油(ヤシ油)というと洗剤を連想するが、実際は8割以上が食品につかわれていること、ポテトチップスなどの原材料に『植物油』とだけしるしてあるものの多くは、このパーム油であること、健康によいとされる上に安価なため、世界的に需要が伸びていること、そのためプランテーションが爆発的にふえていること、そのふえた面積の少なくとも6割は、熱帯雨林を伐採して作られたと考えられていること、ボルネオ島で作られるパーム油のほとんどは、日本に輸出されていること、などなど。
そして、単純に『開発は悪い、すぐやめるべき』という問題ではないこともていねいに説明されていて、私にもよくわかった。

 私の毎日の暮らしの中で、パーム油を使わない日は一日もないのだと知った。私の日常生活は、ヨーダたちの住むボルネオの熱帯雨林を伐採することでささえられている、ともいえるのだった。どうするべきなのかわからないが、まずはこの事実を知り、私たち消費者みんなで考えはじめることが必要ではないか。

 私は『バナナじま』の例の見開きページに、このことを書いたらどうだろうと思うようになっていた。
しかし、絵本にこのようなことをのせるのは独善的だろうか? 悶々と考えつづけていたある日、ラジオからマイケルジャクソンの訃報がながれてきた。
(つづく)

絵本『センシュちゃんとウオットちゃんの バナナじま』(小学館
絵本『センシュちゃんとウオットちゃんの バナナじま』(小学館)
自分の分身のような主人公
自分の分身のような主人公