ラフレシアTシャツを着たパンチパーマの奥さんとの遭遇から10日後、われわれは神田にあるジスコ・ボルネオ旅行社にいた。「ボルネオのことしかできませんが、ボルネオのことなら何でもおまかせ下さい」がキャッチフレーズのボルネオ専門の旅行社だ。
前述の海辺リゾート旅の後、オランウータンのために自分たちにできることを探すため、夫がネットを使ってボルネオのことを猛烈に調べた。すると必ず出てくるのがこのジスコ・ボルネオ旅行社の名前だったという。キャッチフレーズから察せられる通り、熱いものを予感させる旅行社で、神田駅からの道順を知りたくてウェブサイトの『アクセス』ボタンを押すと、地球の絵とともにボルネオ島が出てくる、という気合いぶりである。
余談ながら夫はネットで何かを根気よく調べるのが得意で、特に旅のプランを立てる際の調べ方が尋常ではない。前回の「南の島取材」のときは世界中の島を調べあげていた。理解に苦しむのは超絶に高級なリゾートに滞在するプランまでくまなく調べている点である。当然却下である。格安が絶対条件なのは明白なのに、どうして必ず浮世離れしたプランから私にもちかけてくるのか、毎度イライラする。が、「いちおう念のためにということです」と一向に改める気配はない。
さらに特筆すべき点は、調べた情報をすべて記憶していることである。旅番組でどこかの南洋の島がうつると、「あれは◯◯島、東がわにバンガロータイプのロッジが点在していて……」などと豆知識がよどみなく出てくる。「俺は今ほとんどの南の島の宿泊事情が頭に入っている」とのことである。惜しいのはこの特殊技能を活かす場がいまのところ家庭内以外にないということだ。
その日は偕成社にて絵本『Letters』の打合せ後、YOさんと連れだって神田へ行った。地図をたよりにジスコ・ボルネオ旅行社にたどりつくと、すでに夫が到着しており、お店の人とテーブルいっぱいに資料をひろげているのが見えた。(つづく)