上橋菜穂子『炎路を行く者 守り人作品集』1月下旬発売!

炎路を行く者『炎路を行く者』上橋菜穂子/作 佐竹美保・二木真希子/絵

上橋菜穂子さんからのメッセージ ––––『炎路を行く者』あとがきから

「炎路の旅人」を、世に出すことができて、ひとつ肩の荷がおりたような気がしています。
 この物語が、こうして日の目を見るまでには、その過程を描くだけで、ひとつ物語を書くことができるほどの、長い道程がありました。
 この物語は、『蒼路の旅人』の前に生まれたもので、その時期に再版された『精霊の木』の帯に予告が載ってしまったのですが、その後、出版されることなく、長く私の手元に置かれることになったために、講演やインタビュー、サイン会などで、「あの本はいつ出るのですか?」と、ひんぱんに聞かれる「幻の物語」になっておりました。
「炎路の旅人」が、なぜ、あのとき出版されなかったのか。––––それは、この物語が生まれたことで、「守り人」シリーズが、『天と地の守り人』へと 至る大河物語としての姿を、私の中に立ちあげてしまったからなのです。そして、皮肉なことに、それゆえに、『蒼路の旅人』の前にこの物語を世に出すことができなくなってしまったのでした。(中略)

 それが、ある朝––––この夏、北海道に行って、帰ってきた翌朝––––に、突然、ぱっと、「炎路の旅人」を大幅に書きなおすことで活かすことができる道が、頭に浮かんできたのでした。
 脳みそというのは、ほんとうに不思議なものですね。
なぜ、そんな発想が浮かんだのか自分でもよくわからないのですが、一冊の長編であった「炎路の旅人」を中編に書きなおし、さらに、これもまた、かつて生みだしかけたままお蔵入りになっていたバルサの若き日の物語を、しっかりと書きなおして加えれば、世に出す意味のある本になる、ということが「見えた」のです。
「十五の我には」も大好きな話で、まさか十五歳のバルサが、少年時代のヒュウゴを、こんな形で救ってくれることになるとは、なんと不思議なことだろうと思わざるをえません。

『天と地の守り人』の物語の狭間で、語ることのなかった、ふたりの物語。楽しんでいただければ幸せです。

 

著者紹介
上橋菜穂子:立教大学博士課程単位取得(文学博士)。現在川村学園女子大学教授。専攻は文化人類 学。オーストラリアのアボリジニを研究。『精霊の守り人』にはじまる「守り人シリーズ」で野間児童文芸新人賞・産経児童出版文化賞・小学館児童出版文化賞 を受賞、『狐笛のかなた』で野間児童文芸賞を受賞。ほか、著書に『精霊の木』『月の森に、カミよ眠れ』『獣の奏者』などがある。