本の窓口新刊情報>話題の新刊 Vol.018 上橋菜穂子さん「精霊の木」
話題の新刊 Vol.018/守り人シリーズの原点、いまここに。

上橋菜穂子 上橋菜穂子さんのメッセージ/若い……!
 大学院生の頃まで住んでいた実家の二階には、父のアトリエがあるのですが、父が階下の居間でお茶を飲んだりしている間は、アトリエは、家族に声を聞かれずに電話をかけられる場所でした。
 このアトリエから、破裂しそうな心臓の鼓動を聞きながら、はじめて偕成社に電話をかけた時のことを、今もあざやかにおぼえています。作家を夢見て、自分が書き終えた原稿を読んでもらえないだろうかと、電話をかけたのでした。よくあんな勇気があったものだと思いますが、若かったのですねぇ……。
 そのとき持ち込んだのが、この『精霊の木』の原稿で、これがデビュー作となったのです。
 いま読み返してみると、この物語には、そういう「若さ」が、いい意味でも悪い意味でも溢れています。その頃心の中にあった思いやアイディアを全部ぶちこんで書いた物語ですから。
 初版から十五年経って、それなりに変化をした現在の私の目から見ると、この物語は「若かった頃の自分」があまりにも素直に出てしまっていて、再び世に送り出すのは、いささか(というか、とっても)ハズカシイ。 
 それでも「読みたい」といってくださる、たくさんの読者のみなさんに背中を押していただいて、ようやく踏ん切りがつきました。
 ちなみに、この本は、『守り人シリーズ』の絵を担当してくれている二木さんとの出会いのきっかけでもありました。『守り人シリーズ』を楽しんで下さった読者の声に支えられて、二木さんの絵で、この本が装いも新たによみがえる……。
 本の中身はとっても「若い」けれど、この本には十五年分の私の年月がつまっているとも言えるのでしょう。

上橋菜穂子
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精霊の木
精霊の木
上橋菜穂子=著/二木真希子=絵

対象年齢:小学上級から
定価:1260円

上橋菜穂子デビュー作の改訂新版。宇宙のとある星に移住した地球人の子孫が、急速に滅亡したとされる異星人ロシュナールの謎に迫る。「異文化への理解」という著者の一貫した姿勢が、このSF作品でも色濃く反映されている。
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