「チューリップの花がきれいに咲いていた。いかにもニッコリニッコリわらって咲いているようであった」太平洋戦争のさなか、琵琶湖のほとり。戦争という混乱の時代に、文化がないなら文化をつくろうと考えた教師の発案ではじまった学級日誌がありました。そして、この学校の校長は「総合教育」「土に親しむ教育」に一生懸命でした。
ふしぎな明るさを放つこの日誌には、鮮やかな色彩の絵とともに、毎日の学校生活がゆたかな筆致で語られています。しかし、戦況が厳しくなるにつれ、少女たちの言葉にも好戦的なものが増えていきます。「敵米英をたたきつぶしてしまえ」子どもたちの暮らしやこころの中にまで、じわじわと侵食していく「戦争」のすがたが、彼女たちの目をとおして浮かびあがってきます。
戦時中の5年生の女子生徒たちが1年間描き続けた、188枚の学級日誌全記録。その貴重な記録である日誌は「どこにでもあった戦争」を現代につたえます。戦時についての解説付。オールカラーの大型本です。
1940年鳥取県生まれ。京都大学理学部入学。同大学院文学研究科(西洋史)修士課程修了。朝日新聞社、CSテレビ衛星チャンネル・キャスター、龍谷大学国際文化学部教授を経て、東京・練馬区でコミュニティカフェを主宰。他に関西学院大学国際学部非常勤講師、NHKカルチャーセンター講師など。著書、論文、編書に『日本とアジア』『戦争の時代の子どもたちー瀬田国民学校五年智組の学級日誌より』『働くということ―社長さんの大学講義』『新世界史―同時代で見る日本と世界』『インド同時代』『スハルト「帝国」の崩壊』『「畠田」の発見―大津市瀬田地区のため池調査から』『利息を禁止した宗教の知恵―おカネと資本について考察する』『メディアとしてのおカネ―試論 經濟を記号論で読む』など。